25話 #nahive2qgpj02j4i

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放棄された地下室の掃除をしている。地下へと続く木造の階段からして頼りなく、ところどころ横板が傾き、ささくれ、釘が露出しているので、おそるおそる下ってゆくのである。そのうえ元の持ち主の趣味か地下室はホラー風味にしつらえられていて、階段を降りてすぐの壁にはおどろおどろしいポスターが貼ってある。奥の、タイル張りの一帯はトイレだったはずだが、壊れかけの机と、日焼けした雑誌が積んであった。

車の目の前を自転車が二台、並んで走っている。右の男はシルクハットを被り時代がかった出で立ちで、今まで自転車で旅してきた記憶を隣の男に(自転車を漕ぎながら)語りかけている。この男はメルカトル鮎である。

大きな音響システムに向かい、ソファに座り音楽をかけている。オバマ(大統領)が隣の女性のために曲を選んでやるがプレイリストを作っていないので一曲ずつ演奏が終わるたびにまた選び直さなくてはならない。そのうちに流れてきた曲を俺は知っている。DDRの曲だ……ならば俺は踊らなくてはならない……曲名は「かのん100%」。それから画面に教育ビデオが流れる。色の話。赤っぽい色のバリエーションと、その日本語名が列挙される。その後、それらに共通する成分の色が提示される。解説する女性の声は「この色は『子』です」と言っているが、すぐには意味が分からない。よくよく見れば並んだ色の名前はほぼすべて「子」で終わっていたのだった(桜子色、など)。