25話 #nahive2qgpj02j4i

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その冬の街では風呂場で蛇口を捻ってシャワーの冷水が湯に変わるのを裸で待つ間、このままいくら待てども水が温まらなかったらどうしようという恐怖により千人が毎年死んでいるらしい。と話すと「それだけの人が死ねるなら冬の街も安泰ね」と彼女は言って眠るペットの毛皮を撫でている。その小動物はただ眠る姿がかわいらしいというので生涯を眠って過ごし定められた台座から生きるのに(眠るのに)必要なだけの養分を送り込まれている。やがて外気に触れていない肌の表面から黴と腐敗に蝕まれ、いつの間にか死んだそれは美しい毛皮のドームを除いて空洞になってしまうのだがそれはそれで美しいといって珍重されているのだ。