25話 #nahive2qgpj02j4i

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タクシーの中で『艦これ』をプレイする。勝手がわからなくて、すぐに負けてしまった。タクシーを降りるときにゲームの請求書が紙で寄越されたが、力強い明朝体で一万八千何百円と載っており、払えない額ではないにせよ、なかなか痛いなと思った。初老の、人の良さそうな運転手がわざわざ後部座席のドアを開きにきてくれ、そんな話をする。

「どのレベルをされたのですか」

レベルなど知らん、と思って紙に目をやると「中級」とある。

「初めてのプレイで中級を勝利したのなら、なかなかのものです」

いや、負けたんだけど……と思いつつ、話をあわせる。結局支払いは八百円かそこらで済んだ。運転手が俺の後ろの人物に向かって不機嫌そうな声を立てる。どうやら少年との相乗りだったらしい。運転手はその少年にこれこれの本を読め、と命じている。それが運賃の代わりらしい。その本は海外の有名な物語で、友情を謳った名作だったので、きっと少年に更正してほしいのだろうと、俺は運転手の意図を推察する。