25話 #nahive2qgpj02j4i

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『 THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!』

観た、観た、観たよ、おれも観てしまったのだよ、あの映画を、気にしていないふりをして、知らないようにしていたこの映画をおれは、ど真ん中の席に座って、観たのだった。久しぶりにチケット予約システムなど使って、ぎりぎりの時間にシアターについたら、発券機にずいぶん昔に登録しただろうので憶えてもいない暗証番号を求められ、はて誕生日だったろうかと入れてみれば、ご明察、それは真の誕生日だった。

少しは空いているだろうと予想して来たのだけれど、三十人ほど居て、とはいえ両隣の席は空いているし、気にはならん、と思って、スクリーンに向かうと、この誰とも知れない奴らとこれから感情をともにするのか、一体になって、と思われて身体が震えた。それにしても、歳をとってばかになってしまったのだと思う。最初のシーン、おれは寒いって思いながら、気づいたら涙を流していて、最初からこれじゃ先が思いやられるぜ、やれやれ、けど何がお前を泣かせているんだ、と考えるとわからない。後から考えるとどうも歌が流れると条件反射的に泣いてしまうらしい。おう、これはおかしい。以降まともに映画が観られなくなってしまった。脳内には自分のリフレクションばかり。アイドルマスターとはおれだったのだから、当然のことではあるけれど。

それにしても「これは大勢の人間にとってはテレビアニメの延長なのだな」と思ったのだった。実際そうだ。おれにとってもまあそうだ。だが強くそう思ったのだった。今回は春香の話だったはずだ。春香を中心に皆がテレビシリーズを踏まえて歩みを進め、また続く予定の未来を示した。だって春香は永遠のセンターガールだからだ。みんな今回、厳しかった。春香は悩まなければならなかった。もともとそうじゃなかったはずだ。すべての端緒が天海春香で、予めすべての困難を打ち砕き、彼女が開いた扉に皆がつづく、そんな画がつねに掲げられていたはずだ。けれどこの逆境は、描かれねばならなかった。それは後輩たち、あの彼女たちがいたからだ。けれどそれはけして悪いことじゃなかった。だって春香が、みんなが、他人と話している! やりとりしている! 関わりを持っている! そう思った、あの小さなモニター、薄暗いゲームセンターの中でただおれ一人と相対していた彼女らが、話している、ストーリーを作っている、歴史を作っている、知らない彼女たちになっていく。そんな話だった。メジャーな世界はこうなりますよという、そういう引導だ。だって現実そうなってるのだ。喜ばしいことだ、たぶん。

このくらいがおれの精いっぱいで、もはや斜に構えることも、情熱を燃やすこともできない。酒を飲みながら帰った。ライブシーンはすごくよかったよ。現実にそれを疑似体験する機会がなければよりいいのに、と思う。いま映画を検索したらジャンルは青春と出た。ああ、まちがいなく青春だ。