25話 #nahive2qgpj02j4i

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20141225

きのうは勤務先を出るのが遅かったからか、帰りの電車の中でたくさんのカップルを目にした。外から見ているだけでは彼らが恋人同士なのかその前段階なのかはわからないが、どのふたりも想い通じあっているように見える。けれどそれはただこの夜がそう見せているだけなのかもしれない。車内で騒いでいる人もいず、電車の音だけが聞こえてきて、それぞれが自分たちの時間と空間をもっているかのようだった。ヘッドホンを置いてきてしまったことに気がついたので、暇にまかせて車内を見渡してみると、たぶんみんなお酒が入っているのだろう、隣で眠ってしまった女の人をいつくしむように見ている男の人とか、一人ぶんだけ空いた席に彼女を座らせてゆっくりと会話している恋人たちとか、そういった光景が目に入って、彼ら彼女らはこれからセックスをするのだろうか、それとももうそれも終えてしまって、いまは満足して家路についているだろうかと考えてみたけれど、経験がないから分からない。そういえばあのひととあのひとはつき合いだしたのだと話に聞いた、それならば自分の知っているあのふたりも今夜セックスするのだろうか、それはどんな風におこなわれるのだろうか、出会ったときは赤の他人どうしだったふたりが、どうして裸で肌を重ね合うことになったのだろうか、そのいきさつを想像してみても、やはり経験のない千早には分からなかった。