ヒロミ・ゴトー『コーラス・オブ・マッシュルーム』
- 作者: ヒロミゴトー,Hiromi Goto,増谷松樹
- 出版社/メーカー: 彩流社
- 発売日: 2015/06/25
- メディア: 単行本
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カナダの日系移民3世であり英語しか分からない孫と、日本語しか喋らないオバアチャンとの、物語を通じたつながりが本の中心になっている。本文の中に太字で現れる「ムカーシ、ムカーシ、オオムカシ……」で物語が語られはじめ、いきなり婆さんの悪態ではじまるので、この本は面白いに違いない! と本屋で冒頭2ページほど立ち読みして思ったのだけど、読んでみると期待とは違った方向に話は進んでいった。期待にあったのは枠物語的な構造と非現実的な話たちで進行されるより大きなストーリー、それから表題のエキゾチックな印象であった。まあ言ってみればそこから外れてはないんだけど、合間合間のメタ的な視点で(内側の)物語が非現実的であることが指摘されてしまうところが惜しかった。主題が女系3代の関係性なのも自分には合わなくて、何かしら書き手の自意識がベースになっていると感じさせるが登場人物のマッシュルームなり日本なりへの愛着というものがよく理解できなかったのだ。文句ばっか長々と書いているようでよくない。原著は英語だけど説明なく漢字やカタカナが登場するのだとあとがきで知って、そちらの方が面白そうだと思った。しかしその感じは翻訳不能だ。