村上隆『芸術闘争論』
- 作者: 村上隆
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2010/11
- メディア: 単行本
- 購入: 8人 クリック: 123回
- この商品を含むブログ (34件) を見る
村上隆って完全にイメージでしか知らなくて、なんかオタク文化を剽窃した現代アートで高値つけてるひとでしょ……くらいにしか思ってなかった。表舞台に顔を出さない人だと思ってた。そりゃお前の観測範囲にほかならないであろう、なにも情報に接してないのにこれだけの想像を作り上げてるのは異常と言われてもしょうがない。異常であると反省した。
この間のNHKの『日曜美術館』にこの人が出ていて、上記のように印象はよくなかったものの流し見ていて絵もよく、フィギュアとかイラストの人っていうイメージを持っていたのが違うなと気づいたので、数年前に人からもらった本をようやく開いた。
あとがきを読んでようやく気づいたのだけどニコニコで持っていた講義を本に落としたものらしい。それがあってか文章は話し言葉で読みやすく、そしてまとまりがないように感じる……。
曰く、
- 日本には芸術は貧しさと強く結びついてあるべしという間違った思い込みがある。これは現代アートの作品に高値がついていることへの批判を意識したもの。
- またアートは自由であらなければならないという誤りもある。これはどちらかというとアーティストを志す若者、とくに芸大生向けのものだろう。
後者の話がメインになって、どうやってこの現代アート業界を生き抜くのかという概論からテクニックの話が続くのだけど、ようは「現代芸術」というゲームのルールを理解し、それに自覚的でなければなりません、という話。若者は内省的、私小説的なアートを志向してしまいがちだけどそういうものではない。という話を滔々とつづけるのだけど、そういうふうに村上隆はこの業界をとらえてやってきたのかと面白い。結局現代アートは批評っぽいなと思った。そう思うと一抹のつらさがある。
ちなみに前者の話は説明がよくわからなかったけど一点ものの作品である以上金持ちの慰みものになりやすいということだなと思った。この点ほかの芸術にはない特質だよな。大量生産でいいじゃん。