25話 #nahive2qgpj02j4i

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アイドルマスターを聴いて自分は純粋でなければならないと思う男「おれは純粋でなければならない」

それはおれだ!

旅館「原子郭」に行きたい。

それは短い春が終わり、そろそろエアコンを稼働させるかどうか悩むくらいに、暖かさが暑さに変わりはじめてきたころのことだったという。その日も、我慢できないほどの暑さにはまだなっていなかったから、秋月律子は事務所の窓を全開にしたが、そうすると目の前の往来の街路樹で朝から早くも活動を始めていた蝉たちの鳴き声がここぞとばかりに大きくなり、律子もふくめて皆、少しばかり声が口数が減ったようだった。扇風機と風鈴だけがこの暑さに抵抗するよすがであったが、この二つの組み合わせは物質的にも精神的にも涼しく感じさせるのだから、一番効果が大きいのよ、とは律子の弁だった。そのくせ自分は仕事にかこつけて客先のクーラーで涼んでいるのだ。そう恨みがましく思いながら菊地真はソファに寝転んで少女漫画雑誌を読んでいたという。一人で留守番をさせられていたのであり、つい先ほどまでは学校の宿題に取り組んでいて、誰かが真のために書きこんでくれたノートとにらめっこしていたが、ある数式から次の数式に何故つながるのかどうしても分からなくて、投げだしてしまったところだった。