25話 #nahive2qgpj02j4i

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女子高生たちの先生の送別会のため皆で映画を見にいくのだという。しかし会が開かれたあともまだ数日のあいだ勤務が残っているとのことだったので、電話して、上映後はもうその教師が働く必要のないように取りはからってもらった。しかしこのせいで却って不都合が出るのだろうなと思った。映画館は歓楽街の中にあり入ってみると客に混じって何人かの後輩が並んでいた。チケットを持っていないことに気づいて後輩に訊いてみてもどの映画を見るのか判然としなかった。

映画を見るのにか日本人だと証明するのにか登録が必要でプログラムを書くのだがどう考えても正しくないものになっていて案の定どこかの外人にその不備を指摘される。指摘したその男がひとり去ろうとするので追いかけてひとこと言ってやろうとするのもまた外人の男である。そこは霧がちな半月状の台地の縁の直線道路でオランダふうのカラフルな商店が片側に並び反対側は眼下に深緑の森が広がっている。その道で、追う男はひとり叫ぶ。

「お前は俺が不正をしたと言うのだろう、確かにそれは否定できないがこの俺の居場所を証明できるものが一つある。それはこの嵐だ!」

振りやった手の示すほうには過ぎ去った嵐の影がたしかに見える。「住所:嵐」とでも書くつもりなんだろうか? 追われる男は聞いているのかいないのか、無言で背を向けたまま、歩む速度をゆるめようともせず、その表情もわからない。追う男はつづけて、年齢と体重を間違っていたのでもう一度修正できるのだと主張する。アスタリスクで罫線の書かれた古めかしい登録票には年齢が16と書かれていて本当かと疑う。男は白髪で髭面で顔には皺が刻まれているのである(今思うと『ドキドキ!プリキュア』のベールに似ていたかもしれない)。

半月状の台地の弧になっているほうは赤茶けた土肌の露わになった崖でこちらはほこりっぽい居住地になっていて貧乏そうな子供たちと一緒に飯を食いオレンジジュースを飲む。『はじめてのおつかい』らしき催しがテレビの中なのか目の前で実際に起こっていることなのかわからないが開かれていて四人の少女が道の幅いっぱいに拡がってボックスステップを踏みながらゆっくりとこちらに向かって歩いている。そうすると後ろから追い抜くことができないのだ。そういう戦略もあるのだなと納得する。