25話 #nahive2qgpj02j4i

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インドネシアに行くことに決めていたのに空港へ向かうバスの中で他の旅行客がトラベラーズチェックとかいうのを持っているのを見て自分は現金を裸でポケットに入れているだけなことに気づきこれではいけない! と危機意識だけを募らせて空港に着いたが三十分の発なのに気づいたら五十分になっていて乗り過ごしてしまった、と内心ホッとするような気持ちもあるが、予約した航空券や三日分のホテルの一日を無駄にしてしまった。一時間もすると天候が荒れだして、あの便に乗っていたら大変だったなどと言って自分を慰める(がそれでも出立できなかったことには変わりない。ときどきこういう旅行に行きそびれる夢を見て、焦ることがあるよなあ、おれ)。空港のドア付近では友人の友人がいて外に食べに行こうと言ってるが友人のほうは空港の中にあるカフェのカウンターにいることに気がついていないらしく、直接の知り合いではない人間と二人で少し気まずい。空港の中央には陶磁器の道具が地面に並べてあり一緒に見ていたにやにや笑いの男がひとつの白い、注ぎ口を切り落とされた急須のようなものを指して言う、これは見ただけで何の道具か分かりますなあ、はっきりと何なのかを言わないが、どうやらそこに精液を注いで少女に飲ませるための道具らしいと分かった。その男に小学校の同級生だった女がやだ、やめてください、と言っているが、それはこのいやらしい言動や態度のことではなくて「死のタレ」なるものを容れた醤油さしをぞんざいに皿の上に置いていたからだった(そのタレを舐めると死ぬ)。他にも致命的な道具が多数あったらしいがそれ危険じゃないんですか、と誰かが訊くと木の枝でも置いておけば気づくだろうという返答だった。